半年間、待ちました。
ついに鬼瓦が焼きあがったとの連絡が入りました。
やっと、いつ着工するかをお寺さんと相談することができます。
最短の着工だとお盆の時期も工事中ということになりそうです。
お寺に一番多くの檀家さんがいらっしゃる時期に足場を組んでいる姿というのはいかがなものか?
工事をするということを多くの檀家さんに見ていただける機会と捉えるのが良いのか?
先祖をお迎えする時に工事中は失礼と捉えるのが良いのか?
悩みましたが弊社からはお盆明けからの着工を申し出て、お寺さんに了承して頂いたので盆明けから着工することに決定しました。
やはりお盆のお寺に足場は似合わない!そう判断しました。
ところで、もうひとつ問題が。
地域性の高い問題です。
それは「御所の湯」が近いということ。
御所の湯には大露天風呂があります。
ひょっとして、足場を組んだら露天風呂が見えてしまうのではないか?
懸念が起こります。
もし見えてしまったら。
悪気があろうがなかろうが。
問題に発展しかねません。
念のため、御所の湯の休湯日に足場を組むことにしました。
鬼瓦まで到達できる高さで、荷揚げ・荷降ろしできるステージを持ち、鬼瓦の交換作業のできる足場を組んで行きます。
私は基本的に高いところはあまり好きではないのですが、何故か仮設の外部足場は平気な性質です。
仮設工事というのは文字の通り「仮の施設」です。
工事が終わると解体・撤去します。
その儚さも相まってか、私には必要造形による美しさすら感じられます。
今回も鳶さんが素晴らしい足場を架けてくれました。
本題に戻りまして。
足場を上り、一番高いところから御所の湯方向に目をやると、
「や、やっぱり見える・・・ほんのちょこっとだけど」
(※この日は休湯日です!)
これでは作業することができません。
急遽目隠しのシートを足場の上部に設置することにしました。
これで足場側からは露天風呂は見えません。
お風呂側からも本当に見えないかは明日、実際に御所の湯側から確認することにしてこの日の足場組シート貼り作業は終了します。
次の日、地域振興局の温泉課と御所の湯の湯番さんにも相談します。
この日はお寺側が男湯ということでどうにか確認することができました。
温泉側から見える部分の足場にもシートを貼り、温泉課と湯番さんにも確認してもらいました。
これでやっと、足場組の作業は終了です。
瓦屋さんには次の日から作業をしてもらいました。
古い鬼瓦、付随する丸筋瓦を撤去。
クレーンも入れない境内なのでほとんど手作業です。
唯一、瓦屋さんの瓦専用リフトだけは設置できたのが救いです。
既存の瓦を撤去すると、いよいよ新しい鬼瓦の登場です。
施工要領書を確認したいと瓦屋さんに尋ねてみると、
「そんなんあれへんわいや」
の一言。
どうもメーカーも説明書無しで送ってくるようです。
瓦屋さんとどうやって施工するかを考えます。
地面にパーツを並べて、仮に組んで。
「実際にやってみる!」という作戦に変更しました。
仮組みで要領を得てから足場の上に運んで実際に設置します。
大きな鬼瓦です。
仮設置、パーツをボルトで接合、バラして修正・・・
細かく大変な作業に数日を要します。
「(天気予報を見て)・・・! 台風が来るな・・・!」
例年よりも少し早い夏台風の望みもしないご参拝の予報です。
足場には目隠しのシートを張っています。
これは通常の風が抜けるメッシュシートではありません。
視認透過を防ぐためのシートなので風を受けると風圧を直接受け止めてしまいます。
風の強さ次第では足場を破壊しかねません。
ましてや屋根や破風板、お寺を損傷しかねません。
すぐに御所の湯の湯番さんに対応策を相談に行きます。
「台風前にシート外したいんで、最接近前日に15分くらい露天風呂禁止にしてもらえませんか?」
「そんなんできれへん!23時以降の温泉を閉めた後か、7時前の開湯前にして」
あっさり言われてしまいました。
しょうがない、台風最接近予報の日の朝6時からシートを外しました。
台風通過後に再度設置します。
これももちろん朝6時からの作業です。
設置しないと作業できないのだから仕方ない・・・。
これがまさかの1ヶ月の工事期間に2度の台風がご参拝。
おいおい、神有月の出雲大社じゃないんだから!
(神社じゃなくてお寺だし)
4度の早起き作業をすることになりました。
作業自体はたいしたことない作業ですが、お客さんに迷惑をかけるわけにもいかないし。
もちろん湯番さんや温泉課にも迷惑をかけるわけにはいきません。
本当に自然ってのは・・・!
そう思った夏の終わりでした。
さらに続く