「和風」日本の原風景にあるカタチ

谷口屋工務店では旅館さんや神社やお寺の工事をさせていただくことが多いので常に「和風」を意識しています。

城崎の旅館といえば和風建築が圧倒的に多いことに起因します。
そもそも「旅館=和風、和室」ってことなのでしょうね。
しかし今では「和風も多様化」していますし、「和洋が折衷」することもよくありますし、敢えてそこに向かうことも多くなりました。
しかし、だからこそ「和風、和室とはなんぞや?」を意識し、真ん中で捉えることを大切にしたいと考えています。

ところで「和風」って何でしょうか?
和風とは読んで字の如く「日本古来の材料・工法・色」で統一することだと思います。
例えば・・・畳(材料)、しっくい(材料)、ジュラク(材料)、真壁構造(工法)、朱色(色)・・・
等です。ちなみに「しっくい」はお寺や蔵などにも多い白いツルっとした壁(今はカラーしっくいもあります)のこと。
ジュラクは和室の壁に多いザラザラした砂壁のこと。
最近は色の種類も増え、一概に和風だけではないかもしれません。
我が家の床の間に黒のジュラクを使ったら締まってとても格好良くなりました。

 

真壁構造とは構造体である柱を化粧材として室内に露出した工法のことです。
洋風の建物は真壁に対して「大壁(おおかべ)」といい、柱は基本的には見えないようになっています。
つまり壁パネルの構造→洋風、真壁(柱梁の構造)→和風という図式です。
ですが、この垣根も年々下がっています。

朱などのは日本古来の色と言われて原色よりも落ち着いた色相彩度となっています。
日本古来の色は数え切れないくらい多くあります。日本の気質・風土を表すのは日本の色かもしれません。

さて、話を戻します。
真壁だと柱が見えます。部屋の中、畳に座ってみてください。
壁が柱で区切られます。
足元には巾木、天井近くには廻り縁。高さの真ん中より少し上にあるのが長押(なげし)です。
「和室は区画の集まり」です。
特別なことをしなくても、大きな区画と小さな 区画が整然と並び変化と調和をもたらしてくれます。これは実は本当に凄いことです。

日本の気候と伝統・文化がもたらした芸術と言えます。

とはいえ、難しく考えることはひとつもありません。
日本人の原風景の中に和室があるということが一番の「癒し」のポイントなのです。

「和室、ええなぁ、落ち着くなぁ」

そう思えたらバッチリ完璧です。

 

和室の中でもうひとつのポイントがあります。
建設業の人間は当たり前に知っていても普通の人は意外と知られてないことじゃないかと思います。
それは木材に「節がない(かなりすくない)」ということです。
柱、巾木、長押、床(とこ)、敷居・鴨居、無目・・・和室の木材には基本的に節がありません。
(最近では設計意図によりワザと節を見せる方法もあります)
節がない・・・無節(字の如く見える面に節は一つもない)
ほぼ節がない・・・上小(じょうこ:上小節の略であっても節が小さく上物)

などと言います。
一概には言えませんが、節がないことが和室の美徳です。
もしくはあっても小さいか生き節と呼ばれる、意匠的に見れる節です。
(対して固く抜けてしまうような節を死に節といいます)。

ご存知でしたか?
意外と知られていないんじゃないかと思います。
柱一本にしても木目が縦筋のものを「柾目(まさめ)」、欅等に代表される波紋のように年輪が美しく見える木目を
「杢目(もくめ)」といいます。
柾目は縦筋の感覚が狭く、均一なものが良しとされ、杢目は好み次第で様々な表情を木材に見ることが出来ます。
私は子どもの頃、何となく「和室なんかダサい」と思っていました。
自分の部屋を洋間にした覚えがあります。
でも今では和室が大好きです。
落ち着き・佇まい・色彩・質感。
本当に落ち着きます。
伝統的な和室に加え最近では現代を取り入れたスタイルに発展もしています。
和室にベッド等がある部屋もそのひとつでしょうか。

最近では和室がない住宅も増えています。
生活スタイルの変化からそれもやむを得ないことだと思います。
だからこそ温泉旅行に行った時に和風に触れて欲しいと思います。
神社やお寺を訪れる機会には楽しんで欲しいと思うのかもしれません。
日本人の原風景に自分が溶け込むこともひとつの楽しみにしてもらえたら、と思うのです。
城崎の老舗旅館さんに行く機会があると、我々はハっとするくらい良い材料が使われていることがあります。
でも今の若い人達はそんなこと知らないだろうし、気にしないんでしょうね。
「新しいこと=良いこと・良いもの」ではありません。
もちろん古ければ良い、なんてこともありません。

建物は建って終わりではありません。
そこがスタートであり、使う人と過ごす時間が建物に刻まれていきます。
住宅の柱に子どもの成長が刻まれていくように。
旅館の柱が落ち着きの色に彩られていくように。

そうやって建物に寄り添う、使う人に寄り添う仕事をしていきたいと思います。