小学校の防火戸の修繕を行いました(後編)

さて、防火戸の修繕工事です。

まずは煙感知器の交換です。

煙感知器が作動しなければ防火扉は自動で閉まりません。

経年劣化で動作しない煙感知器を交換します。

取り外してみてびっくり。

右下は1989年製。(32年前)
左下は1980年製。(41年前)
です。
経年劣化も甚だしいですね。
古いほうは私と同じくらい時を過ごしています。
画像にもある通り、放射線のマークがあります。
適切に処分が求められるのでメーカーに確認して処分を行います。
この煙感知器は「光電式スポット型感知器」です。
感知器の内部に煙が入ると、発光部から出る光が煙の粒子にあたって乱反射するので、それを受光部で感知するものです。
この仕組みを大学の授業で習ったとき、「すごい感知の方法を考えるものだなぁ」と感心したのを今でも覚えています。
次に交換するのは蓄電池(バッテリー)です。
防火扉の閉鎖を始動するキャッチロックは普段は電源で動作します。
しかし停電時(火災時は停電の可能性も高い)はバッテリーにて動作します。
たいてい職員室の報知器機器内に設置されています。
あっさり交換することができます。
そしていよいよ防火扉の修理です。
ひとつひとつの防火扉がなぜ開かないのか?
主な理由は
・物理的要因
 防火扉が枠や床に当たっていて扉が閉まらない
・キャッチロックの不具合
 経年劣化してキャッチロックに不具合がある
というところです。
物理的要因は、扉を削ってあたらないようにします。
キャッチロックの不具合は、交換していきます。
キャッチロックも古いものは20年以上前の製品です。
いかにめったに使われないとしても、やはり20年経つと動かなくなるのかなと思います。
防火扉は閉まる順番があります。(順番がない場合もあります)
上部の棒で閉まるべき順番に扉が閉まるように調整しています。
そして閉まる速度が速すぎると重たい鉄扉で児童が挟まれてしまっては元も子もありません。
扉の閉まる速度を調整するのはオートヒンジ(扉に取り付ける速度調整器)とフロアヒンジ(床に取り付ける速度調整器)です。
取り外してみるとどちらも錆ています。
こちらも何十年と経っているのですから致し方ありません。
交換するとゆっくり正常に閉まるようになりました。
こうして修繕が終わると、今回修繕した防火扉をひとつひとつ動作確認。
煙感知器を専門の器具で炙って(煙を感知させて)自動でキャッチロックが開放し、防火扉が順調に閉まるかを確認して作業は終了です。
防火扉、日常に見かけることはありし、建築の知識として知っていました。
しかしこうして修繕するのは初めてで、勉強になることばかりでした。
使うことがないに越したことがない設備。
しかしいざ!の時に正常に動作しないかも・・・と考えるとゾっとします。
防火扉の不具合が児童の生命に直結しかねないのです。
確かに見えない部分のメンテナンス。お金もかかります。
公共だからこそ万全にできます。
しかし民間でも設備がある皆様は今一度、報告書を見て頂いて、改善指示がありました場合は速やかに修繕してもらえたらと思います!
年度末に5小学校を股にかけた工事のお話でした!
(余談)
今回改めてまじまじと防火戸を見る機会でした。
感想の一番は「クリアランスがなさすぎる」ということでした。
もちろん、煙が流れていかないように、炎が延焼しないように食い止める設備ですから隙間があっては困ります。
とはいえ5mmのクリアランスでは常に不具合と隣り合わせだと思いました。
鉄の扉、重いです。
いかに重量用のヒンジを使っていても戸先が自重で下がるのは明白です。
そんな箇所が何か所かありました。
そしてメンテナンス施工性の悪さ。
鉄の扉、重いです。大きいです。
外すのに4人がかり。
修理して取り付けるのも4人がかり。
防火扉がこんなに大きい必要があるのか?
デザインの問題です。
大きさが半分になっても十分開放的な扉です。
大きさが半分になれば重量も半分です。
もう少しクリアを作って取り付けて、後施工の桟で隙間を埋める仕様にすればいいのになぁ。
そう思うのは施工屋だからですね。
常にメンテナンス・修繕のことが頭をよぎります。
だから大胆なデザインが苦手、という短所でもあります。笑